太田眞世・手織り教室|埼玉県川口駅前

手織り情報

手織り初心者に多い悩みや疑問にお答えします。

下記の回答文は、体系的にしっかり手織りをマスターしたい方に向けたものとなっています。
それ以外の方、例えば特定の技法にしか興味のない方や、コストを一切かけたくない方、織った布のクオリティーにこだわらない方などには、必ずしも当てはまらないかもしれません。ご了承ください。
また、このページにはない疑問や、特に質問したい事などがありましたら、ぜひお気軽にフォームよりお問い合わせください。可能な範囲で、回答させていただきます。

独学について

手織りを独学で習得することは可能ですか?

不可能とまでは言いませんが、手織りをマスターして長期的に楽しみたいのであれば、独学はお勧めしません。

確かに、取り扱いが簡単な卓上機であれば、独学でも何とか布を織ることができるようになるかもしれません。

でも、そこから先が問題です。

初心者の悩みを見ていると、

「どうしたら糸から布が織れるのか」

という、織り機や技法の知識のみに関心が向いているように見えます。

これは仕方がないことですが、手織りを続けていれば、やがて、

「どうしたら素敵な布になるのか」
「何のために、どんな布を織るのか」

ということに関心が移るはずです。

このような段階では、

  • 作品に適した糸を使うこと(=糸の選別眼)
  • 素敵な作品に多く触れること(=制作のアイデア)

が、とても重要になってきます。

糸に関して言えば・・・

当手織り教室では、“保証された糸”を生徒さんに提供していますが、このような糸を独学で選別・調達するのは非常に困難です。

なぜなら、良い糸に触れる経験を通して、糸を見分ける目が養われていくものだからです。

制作アイデアに関しては・・・

当手織り教室では講師だけでなく、多くの生徒さんが次々に素敵な作品を制作しています。
他の生徒さんの作品を頻繁に目にすることで刺激を受け、また、制作のヒントも得られます。

良い環境での手織り経験が大事だ、ということです。

独学で始めたけれど、満足できる作品ができない。そうなってから手織り教室を探すより、最初から信頼できる教室で習った方が良いのではないでしょうか。

一部の、

「織った布のクオリティーは二の次三の次」

と割り切っている人は別ですが、一般的には、独学はお勧めできません。

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織り機について

卓上機と高機の違いを教えてください。

高機は右の写真のような本格的織り機で、一般の人が「織り機」と聞いて思い浮かべるのがこのタイプの織り機です。

2枚以上の綜絖(たて糸を1本ごとに上下させる装置)や、足踏み式で綜絖を操作する仕組みを備えており、組織を織ることができます。

卓上機は高機の機能を簡略化し、テーブルに乗るサイズにまで小型化した織り機です。たて糸の開口操作は手で行います。

卓上機にも複数の種類があります。この点については下記の「Q&A」を参照してください。

卓上機は高機と比べて、織れる布の種類や織りやすさでは劣りますが、一方で、多くの卓上機には次のようなメリットがあります。

  • たて糸のかけ方など、取扱いが簡単
  • 設置場所が狭くてよい
  • 持ち運びが可能
  • 価格が安い

(テーブルルームと呼ばれる卓上機には、必ずしも当てはまりません。)

当手織り教室では、初心者は卓上機から始めることをお勧めしています。

高機

高機

卓上機

卓上機

卓上機の種類と特徴について教えてください。

卓上機を大きく分類すると、テーブルルームとリジッドへドル機(リジッドへドルルーム)に分けられます。

テーブルルームは、高機と同様な綜絖を保持したまま、テーブルに乗るサイズに小型化した卓上機です。筬と綜絖は別々になっています。テーブルルームの特徴は、何といっても、卓上機でありながら組織を織れることでしょう。

ただし、卓上機としてはかなり“かさばる”、というデメリットもあります。

テーブルルームは高機と(以下に説明する)リジッドへドル機の中間的な特徴を持つ織り機です。

リジッドへドル機は、筬と綜絖が一体化したタイプの卓上機です。

基本的には平織り専用となりますが、テーブルルームよりもコンパクトで価格も低く抑えられます。

リジッドへドル機には、クローズドリードタイプとオープンリードタイプがあります。

クローズドリードタイプは、筬綜絖部の穴と隙間に糸を通すタイプで、“糸を通す”という点が高機と同じです。

オープンリードタイプは筬綜絖部に穴はなく、隙間に糸をはめるようにセットします。

ネット上では、簡単にたて糸を張れる織り機として、オープンリードタイプを紹介(推奨)している記事をよく見かけます。

しかし、高機を含めて織り機の本流は“糸を通す”タイプなので、オープンリードタイプはこの本流から外れた、特殊な織り機ということになります。

将来、高機に進みたい人や、長期にわたって手織りの魅力を追求したい人がオープンリードタイプで手織りを始めると、結局、回り道になってしまう可能性があります。

これは重要なポイントですので、織り機の選択の際には十分に考慮してください。

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テーブルルーム

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クローズドリードタイプ
出典: Ashford 社公式サイト
https://www.ashford.co.nz

 

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クローズドリードタイプ
筬綜絖部の穴と隙間

卓上機を選ぶ際のポイントを教えてください。

卓上機の種類の他に、材質や織り幅がポイントになります。

材質に関しては・・・

材質は木製やプラスチック製などがありますが、やはり木製がしっかり安定していて使いやすいです。

織り幅に関しては・・・

細いマフラーは 40cm 幅でも織れますが、洋服生地、大きめのクッション、バッグ、タピストリーなどは 60cm 幅が必要となります。

ということで、一般的には 60cm 幅をお勧めします。

ちなみに、このサイトの「生徒の作品と声」のページや、当教室の生徒作品集のサイトにあるリジッドへドル機の作品は、全て60cm 幅の織り機を使用して織ったものです。

初心者用としてお勧めの織り機を教えてください。

本格的に手織りに取り組みたい場合は、クローズドリードタイプのリジッドへドル機(卓上機)から始めることをお勧めします。

高機と同様に“穴に糸を通す”方式のため、将来、高機への移行もしやすいからです。

もちろん、初めから高機で始めるという選択肢もありますが、取り扱いの難易度や設置スペース、コストなどの面で敷居が高く、多くの初心者に対して安易にお勧めすることはできません。

テーブルルームは、高機を小型化したものですが、テーブルに乗せるとかなり大きく、一方で操作性は高機と比べて大幅に落ちます。また、価格も 10 万円近くするなど、やや中途半端です。

テーブルルームを購入するのであれば、いっそのこと、高機の購入を検討した方が良いかもしれません。(価格は 17 万円程度。指導者が必須となります。)

大半の初心者には、クローズドリードタイプのリジッドへドル機がお勧めです。

日本で購入できるクローズドリードタイプの織り機には、アッシュフォード社製やハマナカの「オリヴィエ」があります。

アッシュフォード社は総合的な織り機メーカーで、リジッドへドル機を 70 年以上も作り続けています。

当手織り教室では、アッシュフォード社製のクローズドリードタイプ(60cm 幅)を採用しています。

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当教室の採用機種

織り機を自作することは可能ですか?

木枠機なら比較的簡単に自作することができます。

木枠機の作り方は、当教室で作成した次の動画をご覧ください。

ちなみに、木枠機の糸の張り方の動画もあります。

その他にダンボールで作る方法もありますが、お勧めできません。

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木枠機

裂き織りは一般の織り機でできますか?

できます。

裂いた布を糸として使うのが裂き織りです。卓上機、木枠機でも織ることができます。

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裂き織り作品例

糸について

手織りに適した糸とは、どのような糸ですか?

手織り用として販売されている糸が安心なのですが、ここでは編み物用の糸を転用するケースについてお答えします。

ウールの場合は・・・

手織りに使うためには、縮絨が効くことが大事です。編み物用のウールの糸は、縮まないように加工されているものが多く、手織りにはあまり向いていません。

シルク、綿、麻の場合は・・・

編み物用の糸を手織りに転用することは可能です。ただし、かたい糸は織りにくいので向いていません。

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糸(イメージ)

自分で糸を作ることはできますか?

はい、可能です。

例えば、次のような糸を作ることができます。

  • 原毛から手紡ぎした糸
  • 布を切って、テープ状にした裂き糸
  • トウモロコシなど、植物の皮を裂いた糸

当教室でも、自分で糸を作り、その糸を使って作品に仕上げる方法を教えています。

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手染め・手紡ぎした糸

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裂き糸

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トウモロコシの皮で織ったコースター

その他

手織り教室の選び方を教えてください。

手織り教室を探す際には、場所や費用など、様々な事を検討しなければなりませんが、一番大事なのは、

「習いたいことを教えてもらえるか?」

という事でしょう。

それぞれの教室には、教える範囲や教え方、目指すものなど、その教室の特徴があるはずです。

例えば、当教室では、「日常生活を彩る様々な布」を教えていますが、伝統的な着物を中心に教えている教室もあります。

また、当教室では手織りを一生楽しめる技量を身に付けていただけるように、体系的なカリキュラムで、様々な技法を広く教えていますが、特定の技法・ジャンルに絞ってスポット的に教えている教室もあります。

自分に合った教室かどうかは、その教室の生徒作品を見れば、ある程度はわかるでしょう。

手織りを習得するには時間がかかりますので、「継続しやすい受講システム」になっているかどうかも大事です。受講頻度や費用などの面で無理なく継続できるか、確認してみてください。

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初心者にお薦めの本がありましたら、教えてください。

独学で手織りを学ぶための「教科書」という意味では、残念ながら、初心者にお勧めできる本はありません。

そもそも、手織りは初心者が書籍で学びにくいジャンルです。

説明文と静止画を見て、手や糸の動きに読み替えなければならないからです。

上級者であれば、自分の経験で補完しながら理解しますが、経験のない(少ない)初心者は、そうはいきません。

最初は、手織り教室などで先生に教えてもらう事をお勧めします。